2020年4月18日土曜日

魔法の島



宮殿の冷たい回廊に
うずくまる老王がひとり
熟れた洋梨を食み
半ば虚な目をして
かなしげに

吊り下がった炎
鏡に写る虚像
そのすべてが
王の胸内を幽かに燃やし
追憶を深めゆく
夜陰を伴って

窓辺を叩く雨音の
しとやかなる伴奏
地面に滴る甘き香り
なべて失われ
なべて沈黙に変わり

ああ、憐れなる者よ
太陽なりや
聖杯なりや
世を憂えたまうもの
世を変えたまうもの
そは生活の光なり
日々のつつましい働きなり
そをおまえは知らず

天上を仰ぎみて
老いたる王よ
何をかおもう
羽ばたく神の使いらも
目に映れば
彩られし絵画に過ぎぬものを



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