宮殿の冷たい回廊に
うずくまる老王がひとり
熟れた洋梨を食み
半ば虚な目をして
かなしげに
吊り下がった炎
鏡に写る虚像
そのすべてが
王の胸内を幽かに燃やし
追憶を深めゆく
夜陰を伴って
窓辺を叩く雨音の
しとやかなる伴奏
地面に滴る甘き香り
なべて失われ
なべて沈黙に変わり
ああ、憐れなる者よ
太陽なりや
聖杯なりや
世を憂えたまうもの
世を変えたまうもの
そは生活の光なり
日々のつつましい働きなり
そをおまえは知らず
天上を仰ぎみて
老いたる王よ
何をかおもう
羽ばたく神の使いらも
目に映れば
彩られし絵画に過ぎぬものを
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