2018年5月20日日曜日

きみのいない世界


きみがいなくなった世界を
想像してみる
しかしそれは
黒く塗り潰された絵画を
いつまでも見続けなければいけないほどに
耐えがたいこと
それならば最初から
真っさらなままであればよかったのにと
思ってしまう

きみがいてこそ
素晴らしい無限の色調がある
きみがいてこそ
あらゆる風景や人物を
愛しさと共に描くことができる
なぜかといって
ぼくらの絵筆は
きみが動かしているも同然なのだから

それがもしも
きみがいなくなってしまうのなら
青々と広がる海も、空も
緑の木立も、淡き花々も
その繊細な色のすべては
だんだんと濁ってゆき
天真爛漫に羽ばたく鳥たちや
祭典に狂熱する人々たちも
みな魂を奪われ
生気を無くした石ころのようにさえ
描けなくなってしまう

 これが信じられないというのなら
 今すぐに君は
 僕らの前から消えてみればいいさ
 けれどそんなことをすれば
 ぼくらが創造する作品の数々を
 きみが鑑賞することも
 また出来なくなるけれど