2018年5月31日木曜日

歴史を知らないわたくしは



歴史を知らないわたくしは
本日起こった戦争を
眠たい顔した野良猫の如く
跨いでゆくのでありました

歴史を知らないわたくしは
本日起こった戦争を
消え損なった雲の如く
感じているのでありました

歴史を知らないわたくしは
本日起こった戦争を
ぼんやりベッドに横たわり
眺めているのでありました


2018年5月24日木曜日

不思議な問いかけ


きみたちが
「あれはなに?」
って
とおく
とおくを
ゆびさすから
ぼくの
なげきや
かなしみは
不思議な
問いかけに
かわってくれたよ

みんな
雨は太陽よりも気まぐれだ
っていうけれど
本当のところはわからない

いつか
この雨が
やんだら
いっしょに
あの場所まで
行きたいね
なにも
わからなくたって
いいからさ
いっしょに
あの場所まで
行きたいね

2018年5月22日火曜日

君に革命を起こすうた



明日に希望を持てないときには
ちいさな声でうたえばいい

人波に押し潰されても
誰かに笑われても
独りが苦しくとも

構いはしない
ちいさな声でうたえばいい

しかし
もしもうたうのならば
本当の夢を
お前の声でうたうのだ

そうしなければ
たとえ大きな希望の火でも
一粒の涙で消えてしまう

うたうのならば
本当の夢を
お前の声でうたうのだ

そうしていれば
死神がお前を呼ぶ声よりも
明日の光が欲しくなる

夢を嘲笑うのは
人生の深い苦悩を
味わっていない者だけだ

本当に苦悩している者は
夢を描き続けること以外に
希望を見出せないのだから

君に革命を起こすうた
ちいさな声でうたえばいい


人生が ただ一冊の 本ならば


人生が
ただ一冊の
本ならば
このいのちさえ
パタリと閉じて
終わらせたのに

そうではないから
苦しくて
そうではないから
楽しくて
簡単には
終えられないまま
続くのだ

開いたままでも
閉じたままでも
誰に読まれる
つもりもないが

人生が
ただ一冊の
本ならば
このいのちさえ
パタリと閉じて
終わらせたのに

2018年5月20日日曜日

きみのいない世界


きみがいなくなった世界を
想像してみる
しかしそれは
黒く塗り潰された絵画を
いつまでも見続けなければいけないほどに
耐えがたいこと
それならば最初から
真っさらなままであればよかったのにと
思ってしまう

きみがいてこそ
素晴らしい無限の色調がある
きみがいてこそ
あらゆる風景や人物を
愛しさと共に描くことができる
なぜかといって
ぼくらの絵筆は
きみが動かしているも同然なのだから

それがもしも
きみがいなくなってしまうのなら
青々と広がる海も、空も
緑の木立も、淡き花々も
その繊細な色のすべては
だんだんと濁ってゆき
天真爛漫に羽ばたく鳥たちや
祭典に狂熱する人々たちも
みな魂を奪われ
生気を無くした石ころのようにさえ
描けなくなってしまう

 これが信じられないというのなら
 今すぐに君は
 僕らの前から消えてみればいいさ
 けれどそんなことをすれば
 ぼくらが創造する作品の数々を
 きみが鑑賞することも
 また出来なくなるけれど


2018年5月19日土曜日

分身


ぼくではない
遠吠えがする

けれど
行き交う人々の
影のような
エントツの煙の
行方のような
眠る草花の
香りのような
ブレーキランプのほの淡い
にじみのような
僕がいる

濡れた手紙も
渡せないまま
過ぎ去ってゆく
街の中
憂鬱な戯曲を
演じるように
雨はこころに
降ってくる

街灯の明かりは水の上
乱反射して傘の上
薄暗がりのぼくの上
私と傘と雨粒たちと
寂しさばかりが
照らされる

あの遠吠えは
ぼくじゃない

ぼくのであって
ぼくじゃない

ぼくではない

遠吠えがする

2018年5月17日木曜日



風のえくぼを見つけても
たそがれ時のもの想い
いっそつめたい夜霧のように
ひとり口ずさむ星のうた

ghostly poem






感じられるものに
霊的な驚異はない。
感じられるものには
人間の人智や感覚の
尊さや悲惨さがあるのみだ。
感じられざるものは
そのまま感じないままでいるときにこそ
人智や感覚を超えている、霊がいる、神がいる、不思議がある。