2018年6月15日金曜日
2018年6月13日水曜日
風のいない部屋
複雑な答えを
ひねり出そうとすればするほど
風はこの部屋から
どんどんいなくなって
風はこの部屋から
どんどんいなくなって
僕は誰かの素直な答えに
ただ憧れる
透明なその心に
ただ憧れる
風のいない部屋に
ぼくだけが
ただひとり
2018年6月9日土曜日
もう やめにしよう
もう
やめにしよう
心地よい
夕風を
感じられなくなるから
もう
やめにしよう
移ろいゆく
淡い空が
くすんでしまうから
もう
やめにしよう
天地の賛美歌が
聞こえなくなるから
もう
やめにしよう
こんな場所で
うつむくのは
もう
やめにしよう
2018年6月8日金曜日
バードコール
どんなに素晴らしい音楽よりも
ぼくを楽しませ、頬を緩めさせ、寛ぎをもたらし
朗らかで、和やかな気分にさせてくれる小鳥が一羽
まるであなたの肩にとまるようにして
電線の上に、爪を引っ掛けてとまっていました。
頭を可愛らしく左右に小さく振りながら
多分こっちも見ていた気がします。
だけど彼は何かをさえずるわけでもなく
ぼくが一瞬間だけ、湿った路面や
うすぼらけた朝霧を爽やかにまとった風の匂いに
うっとりとして目を背けている間に
もうどこかへと羽ばたいていってしまいました。
あなたがやってくるとき僕は
自分には備わっていないはずのものまで
ほんとはもう十分に掴み取っているのではないかと思ってしまいます。
ひび割れた大地も、遠くで車がかすれたように走る音も
外の風景を遮る埃をかぶったカーテンも
あなたの神々しく、温かく、それでいながらどこか冷徹な眼差しに触れてしまえば
ひとたまりもなくなってしまうような気がするのです。
しかしあなたならばどんな邪悪でも許してしまわれるということは
ぼくにとっては、時にあまりにも心苦しく、受け入れがたいことでもあるのです。
あなたが許すもの全てが正しく思えてしまうのですから。
そしてあなたはぼくにさらなる高望みもさせてしまうのです。
あなたはその高貴な眼差しによって
決して今のぼくには手に入れられそうにないものにまで
目を向けさせ、欲望を駆り立ててしまうのです。
あなたによってどれだけのものが救われたかしれません。
けれどもまたあなたによってどれだけの勘違いをし
誤りを犯し、盲目になり、苦しんだことでしょうか。
私があなたから抜け出すことは当分できないでしょうし
自らそうする勇気もないのです。
けれどこれだけは幸いなことだと言い切れます。
あなたのおかけでぼくは
自らを災いに陥らせたいという気持ちから
遠ざかってゆくことができるのですから。
ぼくの住むこの場所の近くには山も谷も、丘も、森もありません。
けれどもその全てがぼくの側で脈を打ち、呼吸をし、あなたによって目覚めてゆくのを
この場所にいながら、あなたの訪れを目の当たりにし、肌に触れ、耳を傾けるだけでも
まざまざと感じ取ることができるというのは
本当に驚くべきことであり、凄まじい生命の、心の、精神の純粋な働きなのです。
私が眠るのは決してあなたから顔を背けるためではないのです。
それはやはりあなたからの果てしない温情に
ひとりそっと感じ入るためなのです。
2018年6月5日火曜日
2018年6月4日月曜日
約束の庭
旅立ったあの人の家の庭に
綺麗な花が咲いている
鳥や虫たちは
あたりを見回しながら
しばらくうろうろしていたが
いつしか
花のもとから
離れていった
庭に咲いていた花は
彼らを追いかけなかった
追いかけることなど
できなかった
それなのに
彼らは
花のもとから
離れていった
離れるしかなかった
けれども
それを見ていたぼくも
同じように
そうするしか
なかった、、、
「君たちは
ぼくらを
置いていくのかい
ぼくらは
きみたちを追いかけたくても
追いかけることが
できないのに、、、」
そんな声が
聞こえてきそうだった
「きっとまた
こっちへ
戻ってくるから」
ぼくは
胸の中で
約束した
そうして
ぼくは
また歩き始めた
歩き始めるしか
なかった
遠ざかるにつれて
募ってゆく寂しさ、、、
涼しい風が
昨日よりもつよく
ぼくを抱きしめてきた
だから
ぼくもその風を
昨日よりもつよく
抱きしめてやった
「あすこの庭に
綺麗な花が
咲いているよ」
ぼくは教えてあげた
「そうかい
それじゃあ僕も
見てこようかな」
風がそう答えた
そう答えることしか
できなかった、、、
この世に生まれ落ちた時から
いや、生まれ落ちるその前から
ぼくの命の灯芯には
火がつけられて
それを今日まで休みなく
すり減らし続けている
ぼくはいつまでも
いや、ぼくだけではない
風も鳥も虫たちも
それから
あの庭に咲く花も
進んでゆくことしか
できないのだ
それはみんな
同じことだ、、、
ぼくは落ちていた石を拾って
川に放り投げた
「どこへ向かっているのかなんて
誰も知りはしないさ
この世にはただ
駆け引きが多いだけなんだね」
柔らかに波立つ水面が
そう言った
「駆け引きが多いだけ、、、」
みんな
自分のことさえ
よくわからないんだな、、、
ぼくはまた
どこかへと
歩き始めた
どこかへと
歩き始めた
2018年6月3日日曜日
どうか大事に届けておくれ
地上にこぼれ落ちたのは
交わしたばかりの 杯さ
泣いてなんかいられない
泣いてなんかいられない
まずは手紙をしたためよう
これは家族へ あちらは友へ
ついでにこれも
いつか愛した人たちへ
いつか愛した人たちへ
そろそろ行かなきゃならないよ
木の実を啄む小鳥たち
どうか大事に届けておくれ
どうか大事に届けておくれ
最後の音が 聞こえてしまうその前に
天へと飛んでいったのは
ミルクの香りの 唇さ
泣いてなんかいられない
泣いてなんかいられない
まずは手紙をしたためよう
これは昨日へ あちらは今日へ
ついでにこれも
いつか愛する人たちへ
いつか愛する人たちへ
そろそろ行かなきゃならないよ
雲に抱きつく小鳥たち
どうか大事に届けておくれ
どうか大事に届けておくれ
最後の虹が 見えてしまうその前に
地上にこぼれ落ちたのは
天へと飛んでいったのは
涙が書いた置き手紙
地上にこぼれ落ちたのは
天へと飛んでいったのは
涙が書いた置き手紙
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