2018年4月10日火曜日

春の扉




扉を開けば
そこにある
かけがえのない
春の命に
わたしは何と
こたえよう



手を伸ばしても
届かない
それなのに
どうしてわたしは
時にためらい
時に苦しみ
行くのでしょう



たったいま
一羽の小鳥が羽ばたいて
ああ、電線が
空に向かって
手を振るように
ゆれています



幸福でもない
うつくしくもない
そんな
何気ない日々の
ひそやかな祈りが
わたしの心を
いっそう切なく
尊いものに変えました

そうして
しぼんだ花に
頬をあて
また来る春を
想うとき

わたしは
わたしは
知りました

わたしの中にも
ぬくもりが
わずかばかりの
ぬくもりが
たしかにあるということを

わたしは
わたしは
知りました


窓を開けば
ここにある
かけがえのない
春の命に
わたしは何と
こたえよう










春の命に



窓を開ければ
ここにある
かけがえのない
春の命に
わたしは何で
こたえよう



手を伸ばしても
届かないのに
時にためらい

時に苦しみ
どうしてわたしは
歩むのでしょう


羽ばたく小鳥に
電線が

いま、手を振るように
ゆれました


すべての美しい

風景よりも
ありふれた
日々の祈りが
わたしの心を
いっそう切なく
尊いものに
変えるのです


枯れた花びらに
頬をあて

また来る春を
想うとき
わたしはわたしのぬくもりを
知りました


扉を開くと

そこにある
かけがえのない
春の命に
わたしは何で
こたえよう