2020年4月5日日曜日

星に寄す詩


おれの内面のそこかしこで

逃亡者のようにこそこそと逃げ惑う
あやふやな「こころ」という存在
おれはもう
貴様らのような詐欺師と付き合うのは
うんざりだ!

おれは貴様らのせいで

これまで築き上げてきたものすべてが
無益に思えて仕方なくなり
ついにはそれらすべてを
跡形もなく消し去ったのだ!
そうして人生の猛り狂う嵐を逃れて
安らかな、永い時空の寂寞に
この魂を委ねることにした

おれがまだ大地に根を張り

太陽の光を浴びながら
意気揚々として輝いていた頃
まっしぐらに、迷いなく呼吸しながら
真の愛を求めていた頃
おれは貴様らのせいで
幾度めまいをし
嘔吐させられ
希っていた甘い夢も
無残に引き裂かれたことだろう!
今思えばそれも結局は
貴様らの義務の一つに
過ぎなかったのだろうが

惑乱し、気が狂い

あやふやなものを信じ
そのために
理想とはかけ離れた道を
知らず知らずのうちに進んでゆく
貴様らと出会った者たちは皆
こうなる運命にあった
かくゆうおれもまた
そのうちの一人であった

けれどどうしたことか

おれは今
この素晴らし奥津城の安寧から
引きずり出されようとしている!
今となってはただ空っぽなだけの
生温いだけの大地の日向へと
再び投げ出されようとしている!
それも貴様らによって!

かつておれは魂のありかを

誤って貴様たちに教えてしまったのだ
そして貴様たちはその隙をついて
密かに玉座を、おれの魂の玉座奪っていった!
おれが最期に見た光景は
憎悪と嘲笑とがおれに向かって
剣を振りかざしているところだった!

ああ、けれど

今のおれならどうする?
運命がこれ以上
おれに眠ることを許さないとするならば
どうすればいい?
いうまでもなくおれは詩をもって
貴様らと対峙するしかないだろう
おれは詩の剣をもって貴様らと対峙し
魂の玉座を再び奪い返すつもりだ!

聞け、愛すべき星たちよ

かつておれに
数々の詩を授けてくれたものたちよ
おれは今まで
閃くひとつの星をみて
無限の宇宙を想像出来ぬものは
詩人にはなれないと信じていた
けれど、もうそれは違うのだ
むしろおれは
おまえたちに語りかける詩を
創造せねばならなくなった!

そうすることによってのみ

おれはおれの内部で逃げ惑う
「こころ」という存在をひっ捕まえ
そいつらのど真ん中に
剣を思いきり突き刺すことができるのだ!

ああ、
だからこそ
運命よ!
与えたまえ!
おれの隣に
いつも
あやふやな
いかさまなものではなく
偽りなく愛せるものをのみ
与えたまえ!