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2018年7月28日土曜日

腐った林檎



   
  腐った林檎と月影が
  招いてもいない希望のように
  夜を眩しくするばかり
  
  殺めることが正しいような
  生きてることが罪のような
  喜ぶことが邪悪のような
  
  醜いものと清らかなもの
  どちらか選べと言われても
  どちらも眩しくなるばかり


2018年7月23日月曜日

イェミルナ

 

あなたの柔らかい頬が
いつまでも近くに感じられます
夜を目深にかぶり
もうすぐ睡ろうとする人々の近くに

あなたの口ずさむ歌声が
たくさんの花束を連れてやって来ます
かなしい争いを越えて
星々の導くふるさとに


ああ、イェミルナ
時の移ろいは
あなたでさえも
変えてしまう
けれどあなたの灯火は
いつまでも密やかで
世界が暗くなるほどに
その輝きは増すばかり

イェミルナ
どうかそのお姿を 
現してください
わたしはここに居ます
とても愛しい国です
もしも迷ってしまうなら
私があなたを見つけます
そしてわたしのちいさな瞳を
もうひとつの空だと思ってください
わたしはあなたの儚い歩みを
永遠のように閉じ込めてみせますから





2018年6月13日水曜日

風のいない部屋


複雑な答えを
ひねり出そうとすればするほど
風はこの部屋から
どんどんいなくなって

僕は誰かの素直な答えに
ただ憧れる
透明なその心に
ただ憧れる

風のいない部屋に

ぼくだけが
ただひとり



2018年6月9日土曜日

もう やめにしよう


もう
やめにしよう
心地よい
夕風を
感じられなくなるから
もう
やめにしよう
移ろいゆく
淡い空が
くすんでしまうから
もう
やめにしよう
天地の賛美歌が
聞こえなくなるから
もう
やめにしよう
こんな場所で
うつむくのは
もう
やめにしよう



2018年6月4日月曜日

約束の庭


旅立ったあの人の家の庭に
綺麗な花が咲いている
鳥や虫たちは
あたりを見回しながら
しばらくうろうろしていたが
いつしか
花のもとから
離れていった

庭に咲いていた花は
彼らを追いかけなかった
追いかけることなど
できなかった

それなのに
彼らは
花のもとから
離れていった
離れるしかなかった

けれども
それを見ていたぼくも
同じように
そうするしか
なかった、、、

「君たちは
 ぼくらを
 置いていくのかい
 ぼくらは
 きみたちを追いかけたくても
 追いかけることが
 できないのに、、、」

そんな声が
聞こえてきそうだった

「きっとまた
 こっちへ
 戻ってくるから」

ぼくは
胸の中で
約束した
そうして
ぼくは
また歩き始めた
歩き始めるしか
なかった
遠ざかるにつれて
募ってゆく寂しさ、、、

涼しい風が
昨日よりもつよく
ぼくを抱きしめてきた
だから
ぼくもその風を
昨日よりもつよく
抱きしめてやった

「あすこの庭に
 綺麗な花が
 咲いているよ」

ぼくは教えてあげた

「そうかい
 それじゃあ僕も
 見てこようかな」

風がそう答えた
そう答えることしか
できなかった、、、

この世に生まれ落ちた時から
いや、生まれ落ちるその前から
ぼくの命の灯芯には
火がつけられて
それを今日まで休みなく
すり減らし続けている

ぼくはいつまでも
いや、ぼくだけではない
風も鳥も虫たちも
それから
あの庭に咲く花も
進んでゆくことしか
できないのだ
それはみんな
同じことだ、、、

ぼくは落ちていた石を拾って
川に放り投げた

「どこへ向かっているのかなんて
 誰も知りはしないさ
 この世にはただ
 駆け引きが多いだけなんだね」

柔らかに波立つ水面が
そう言った

「駆け引きが多いだけ、、、」

みんな
自分のことさえ
よくわからないんだな、、、

ぼくはまた
どこかへと
歩き始めた



2018年6月3日日曜日

どうか大事に届けておくれ



地上にこぼれ落ちたのは

交わしたばかりの 杯さ

泣いてなんかいられない
泣いてなんかいられない

まずは手紙をしたためよう
これは家族へ あちらは友へ
ついでにこれも
いつか愛した人たちへ

そろそろ行かなきゃならないよ
木の実を啄む小鳥たち 
どうか大事に届けておくれ
最後の音が 聞こえてしまうその前に

天へと飛んでいったのは
ミルクの香りの 唇さ

泣いてなんかいられない
泣いてなんかいられない

まずは手紙をしたためよう
これは昨日へ あちらは今日へ
ついでにこれも
いつか愛する人たちへ

そろそろ行かなきゃならないよ
雲に抱きつく小鳥たち 
どうか大事に届けておくれ
最後の虹が 見えてしまうその前に

地上にこぼれ落ちたのは
天へと飛んでいったのは
涙が書いた置き手紙

2018年5月31日木曜日

歴史を知らないわたくしは



歴史を知らないわたくしは
本日起こった戦争を
眠たい顔した野良猫の如く
跨いでゆくのでありました

歴史を知らないわたくしは
本日起こった戦争を
消え損なった雲の如く
感じているのでありました

歴史を知らないわたくしは
本日起こった戦争を
ぼんやりベッドに横たわり
眺めているのでありました


2018年5月24日木曜日

不思議な問いかけ


きみたちが
「あれはなに?」
って
とおく
とおくを
ゆびさすから
ぼくの
なげきや
かなしみは
不思議な
問いかけに
かわってくれたよ

みんな
雨は太陽よりも気まぐれだ
っていうけれど
本当のところはわからない

いつか
この雨が
やんだら
いっしょに
あの場所まで
行きたいね
なにも
わからなくたって
いいからさ
いっしょに
あの場所まで
行きたいね

2018年5月22日火曜日

君に革命を起こすうた



明日に希望を持てないときには
ちいさな声でうたえばいい

人波に押し潰されても
誰かに笑われても
独りが苦しくとも

構いはしない
ちいさな声でうたえばいい

しかし
もしもうたうのならば
本当の夢を
お前の声でうたうのだ

そうしなければ
たとえ大きな希望の火でも
一粒の涙で消えてしまう

うたうのならば
本当の夢を
お前の声でうたうのだ

そうしていれば
死神がお前を呼ぶ声よりも
明日の光が欲しくなる

夢を嘲笑うのは
人生の深い苦悩を
味わっていない者だけだ

本当に苦悩している者は
夢を描き続けること以外に
希望を見出せないのだから

君に革命を起こすうた
ちいさな声でうたえばいい


人生が ただ一冊の 本ならば


人生が
ただ一冊の
本ならば
このいのちさえ
パタリと閉じて
終わらせたのに

そうではないから
苦しくて
そうではないから
楽しくて
簡単には
終えられないまま
続くのだ

開いたままでも
閉じたままでも
誰に読まれる
つもりもないが

人生が
ただ一冊の
本ならば
このいのちさえ
パタリと閉じて
終わらせたのに

2018年5月20日日曜日

きみのいない世界


きみがいなくなった世界を
想像してみる
しかしそれは
黒く塗り潰された絵画を
いつまでも見続けなければいけないほどに
耐えがたいこと
それならば最初から
真っさらなままであればよかったのにと
思ってしまう

きみがいてこそ
素晴らしい無限の色調がある
きみがいてこそ
あらゆる風景や人物を
愛しさと共に描くことができる
なぜかといって
ぼくらの絵筆は
きみが動かしているも同然なのだから

それがもしも
きみがいなくなってしまうのなら
青々と広がる海も、空も
緑の木立も、淡き花々も
その繊細な色のすべては
だんだんと濁ってゆき
天真爛漫に羽ばたく鳥たちや
祭典に狂熱する人々たちも
みな魂を奪われ
生気を無くした石ころのようにさえ
描けなくなってしまう

 これが信じられないというのなら
 今すぐに君は
 僕らの前から消えてみればいいさ
 けれどそんなことをすれば
 ぼくらが創造する作品の数々を
 きみが鑑賞することも
 また出来なくなるけれど


2018年5月19日土曜日

分身


ぼくではない
遠吠えがする

けれど
行き交う人々の
影のような
エントツの煙の
行方のような
眠る草花の
香りのような
ブレーキランプのほの淡い
にじみのような
僕がいる

濡れた手紙も
渡せないまま
過ぎ去ってゆく
街の中
憂鬱な戯曲を
演じるように
雨はこころに
降ってくる

街灯の明かりは水の上
乱反射して傘の上
薄暗がりのぼくの上
私と傘と雨粒たちと
寂しさばかりが
照らされる

あの遠吠えは
ぼくじゃない

ぼくのであって
ぼくじゃない

ぼくではない

遠吠えがする

2018年4月16日月曜日

彼方より



彼方より
見えない力によって
啓示されているものに
絶え間なく
導かれる

そのために
間違いを犯すことからは
逃れようもなくなる

変えられる
信じなければ
生きていくことなどできない

このか弱い命が
償えるとすれば

それは

受け取ったものを
大切に
守ろうとすること

手放すことなどできない
ということを
ひと時も忘れずに
感じることなのでしょうか


La Crise de l'Esprit




政治とは権力の奪取と保持の意志である。
政治は人々に強制と幻想を働きかけるのだ。
人々はあらゆる権力の素材である。

政治精神の行き着く先は常に偽造である

Ambroise Paul Toussaint Jules Valéry〜


祖国を愛するまえに
貴様たちはどうして!
おお、神よ!
潔白ではいられないのか!
それでもこの国を
愛したいとおもうのは
ああ、なぜでしょうか!
そして、神よ!
あなたがそれを
許してくださるのは
どうしてなのでしょうか?
おお、神よ、、、神よ、、、



2018年4月15日日曜日

ghostly poem 11




                   ぼくは少し前に
        まだ風の冷たい夜の海へと出かけました。
                 その海からの帰りに
        ふとあることに気づいたように思います。

それは
この世界に生きてある限り
本当に真っ暗な、深い闇などないということです。
       
      ぼくはしばらく浜辺をさまよい歩きました。
      柔らかな砂を踏み、倒れた流木に目を凝らし
     あらゆる方向から吹き付ける冷たい潮風を浴び
時おり雲と雲の隙間に閃くいくつもの星座を仰ぎ見ながら
    ぼくは荒々しく打ち寄せる獰猛な波音に向かって
            負けじとばかりに声を張り上げ
     自分でも分からない、言葉にもならない言葉を
          半ば狂人のように叫び返したのです。

ぼくのもとに打ち寄せてくるもの
すべてを押し返すように。
          
          そうしてぼくの足をひどくすくませ
         魂さえもうち震えさせたこの夜の海と
 どうにかして親しみ、打ち解けてみたいと思ったのです。
                  そうすればぼくも 
    自分を少しでも変えられると信じていたからです。
          どこからともなく気配を感じました。
   それは叫ぶ前からもうすでに感じていたものでした。
          ぼくの他には誰もいないはずなのに
        どうしても後ろの方を振り向いてみたり 
     平気を装って独り言をぶつぶつとつぶやいたり
              砂に足をもたつかせながら
        首をうろうろさせるしか無かったのです。
               
そうしてやはりあなたは
ぼくに感じたままに感じさせることを
誤魔化すことなどさせてはくれませんでした
                 
                 いつしかぼくの心は
      いくつにも分かれていくような気がしました。
              暗がりに溶け込みながらも
          微かに姿を現わす黒波の音の数だけ
  ぼくの心も止むことなく現れては、いくつにも分裂し
    そのそれぞれが時にはぶつかり合い、混ざり合い
               大きさや形を変えながら
やがてはまたどこかへと消滅していくような気がしました。

現れたものの数だけ
変化し、消えてゆくものがあったのです。
     
     そうしてぼくは自分ではどうにもならない力に
             逃げ出しそうになりながらも
               なんとか向き合いました。
                   
すると今まで
果てしなく遠くの方まで暗かったはずのこの海が
急に明るくなったような気がしたのです。
 
 それは単なる生理的な反応なんかではありませんでした。
    そしてぼくは、ある確信に近い考えに至りました。
           それはこの世界に生きてある限り
           本当の闇などないということです。
         あなたもそう思っているのでしょうか。

光と闇は
必ず補いあわなければ
存在できないのですから、、、
              
                本当に真っ暗な場所を
    その真反対の場所を求めるのと同じような情熱で
   追求し、しまいにはつくり出そうとしてしまうのは

私たちだけなのでしょうか、、、  

あたうる限りの悲劇をつくりだし、また、それを寄せ集め
           いかにもわざとらしく悲しんだり
          時には楽しんだりもしてしまうのは

結局 
私たちだけなのでしょうか、、、